審査員: 石坂拓郎、撮影監督(JSC)
あなたは2023<年FilmLight Colour Awardsの審査員です。今年の応募作品には何を期待していますか?
今年はそのプロセスに参加できることにワクワクしています。私にとっても新しい経験です。私のイマジネーションに火をつけるような魅力的な映像にたくさん出会えることを楽しみにしています。私は、技巧を凝らしたカラーグレーディングだけでなく、撮影中に適切なパレットを注意深く選択することで、感情やムードを伝えることが出来ている映像に出会えることをねがっています。
色とご自身の関係について、またそれが長年にわたって変化してきたかどうか、またどのように変化してきたかを聞かせてください。
色彩は気分や感情を表現する手段であり、私たちが見せようとするものに視線を集める手段でもあります。色は少ない方がいい場合もあれば、多い方がいい場合もあります。ストーリーを表現するために、コントラストと彩度の最良の組み合わせに到達するために、多くの選択肢があります。
あなたはNetflixの映画「るろうに剣心」シリーズで有名ですが、これは漫画を映画化したものです。どのようにルックにアプローチしましたか?
このシリーズでは、鮮やかな色彩を維持することに意識を集中しました。漫画が原作の実写映画なので、伝統的なサムライ映画の美学を超えることを目指しました。 私の目標は、豊かな色彩を保ちつつ、西部劇風のカラーパレットをビジュアルに取り入れることでした。彩度を落とすことは意識的に避け、その代わりに中間からハイトーンに補色を取り入れ、時にはシャドウに濁りが出る色を抑えました。このアプローチによって、非現実的な色彩を取り入れ、実写映像に漫画のエッセンスを取り込むことができました。
カラーグレーディングにはどのくらいの時間をかけましたか?
当時は低予算のプロダクションで、第一作のグレーディングは7日間でした。日本での7日間は決して短くはありませんが、非常にハードな作業でした。ほとんどホラーストーリーと言ってもいいでしょう。
当時の日本にはカラリストという概念があまり浸透していませんでした。アーティストというよりマシンをコントロールするオペレーターのようなものだと考えられていました。ですから、私は初日からログ映像から何をすべきかを指示しなければなりませんでした。とても大変な作業でしたし、マシンは16ビットから32ビットに移行したばかりだったので、グレーディング中に何度もクラッシュするという難題もありました。
当時、プリントを作っていたため、フィルムプロセスのためにカラータイマーがいました。彼はグレーディングでも非常に助けになってくれました。もし彼がいなかったら、私は映画を完成させることはできなかったでしょう。
幸いなことに、日本には今では多くのカラリストが存在し、私は再びこのプロセスを繰り返す必要はありません。過去10年間で、私たちはカラーに関しては非常に進歩しました。
撮影監督として、どの時点から色について話し合いを始めますか。
通常、私たちはパレットについての話し合いを早い段階で始める必要があります。理想的には、プリプロダクションの最初からです。ビジュアルのコンセプトは、セットデザインや衣装、メイク、髪型などとのより良い協力のために話し合われる必要があります。ポストプロセスで画像を強制的に変えすぎずに、ルックを作り出すのを手助けすることが重要です。
プリプロダクションの時間が十分にない場合、ビジュアルの目標を達成するために強力なグレーディングソフトウェアやVFXのサポートが必要なこともあります。ただし、これらに頼らずにデジタル技術を補助的な手段として使用して目標を達成できれば、それこそが、より良い映像を実現する理想的な方法です。
あなたの目から見て、優れたカラリストの定義は何ですか?
私にとって良いカラリストとは、語るのではなく、選択肢を映像で示してくれる人のことです。
今取り組んでいる、あるいは次に取り組む作品は?
日韓合作のAmazon Japanの映画のポストプロセスを終えたところです。 今は、9月末ごろから撮影が始まるNetflix Japanの新しいドラマシリーズに入る準備をしています。 また、2024年3月からのアメリカでの映画の準備も進めています。